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エンジニアによるファイナンス訓練 (企業価値評価編)

前回の続き。今日は日曜日っぽく図書館でペン持ちながらガリガリ勉強できた!こういう休日も悪くない。

エンジニアによるファイナンス訓練 (証券投資理論編) - ボクココ

株主と債権者

企業が売上げを得たとき、その配分は優先順位を持って配分される。給料とか家賃とか借金返済とか。その中で、株主への配分は最後。さらに損失の時は真っ先に株主に配当が出なくなる。

株主は企業の誰よりもリスクを取っている。そのため、株主は高いリターンを要求する。企業にとっては利益が出た際、株主資本コストの方が負債コストより高くつく。

企業価値を高めるには

  • WACC を低くする(後述) -> IR情報を通じてリスクを下げる、負債コストと株主資本コストのバランス
  • フリーキャッシュフローを増加 (後述)
  • ワーキングキャピタル(売上債権 + 在庫 - 支払い債務)を増加させないようにする

加重平均コスト (WACC)

株主と債権者の要求に応えるために、企業が得手元の資産を活用して生み出すべき最低限の収益率。この値を使って企業における投資判断をする際のディスカウントレートを決定する。

企業は、株主と債権者双方に対するWACCを上回る利益を上げてはじめて企業価値を高めることができる。

WACC の算出

WACCは株主資本と負債の加重平均で求められる。

WACC = 株主資本コスト * (株主資本) / (株主資本 + 負債) + 負債コスト * (1 - 税率) * (負債) / (株主資本 + 負債)
  • 株主資本コスト: 株主へのリターンの金利CAPM の理論を使って求める。
  • 負債コスト: 企業がこれから調達するとした場合の金利
  • 株主資本: 株価 * 発行済株式数 (上場している場合。上場していない場合の求め方はDCF法。後述)

株主資本コストをCAPMで求める

CAPMの復習:

 E(rs) - rf = β * [E(rm) - rf]

株主資本コスト (期待リスクプレミアム) = β * マーケット・リスクプレミアム

※ マーケットリスクプレミアムは、マーケット全体が国債よりどれだけ高い利回りを提供できるかを示す。長期にわたる株式の平均収益率とリスクフリー資産の平均収益率の差。日本では5~5.5%とすることが多い。

βはその企業がマーケットにどれだけ依存しているかを表す。βが高いと、マーケットが上がるとその分その企業の株価が上がるような銘柄を示す。βが高い程ハイリスクハイリターン。このβの値を計算して提供している会社がある。

CAPMは過去のデータを元に算出している。将来のリターンが大事なのに。またβではとらえきれないリスク(大規模リコールなど)を考慮していない。あくまで理論上の話であることをお忘れなく。

フリーキャッシュフロー

企業が事業活動を行った後に、資金提供者である株主と債権者に自由に配分することができるキャッシュフロー。 企業が営業活動からどれだけのキャッシュを生み出すことができるのかを把握できる。この額を上げる努力をすることで企業価値は高まる。

フリーキャッシュフロー 
 =  EBIT  * (1 - 税率) + 減価償却費 - 設備投資 - ワーキングキャピタル増加額
 = NOPAT                 + 減価償却費 - 設備投資 - ワーキングキャピタル増加額

EBIT ・・ 営業利益と同等と考える

減価償却費を引くのは、実際には出て行かない減価償却費を足し戻すため。

企業価値を高める方法はわかった。それでは、そもそも企業価値はどうやって数値的に求めるのか。

企業価値評価

上場企業の場合はマーケットが評価してくれるので簡単。

企業価値 = 株主時価総額 (株価 * 発行済株式数)  + ネット・デット (実質有利子負債 = 負債 - 現金)

なぜ負債を足すのか。その会社を買収しようとしたとすると、その会社の返さなきゃいけない負債も買い取らないといけない、と考える。

未上場の場合、この方法では計算できない。 DCF法を用いる。

DCF法

事業の価値は、企業が将来生み出すフリーキャッシュフローの現在価値の合計に等しいとする方法。 この計算は、前々回にやった成長型の永久負債と同じ計算方法で求める!

手順

その他の企業価値算出 (EVA: Economic Value Added)

負債コストと株主資本コストを考慮した企業価値の指標。

EVA 
= NOPAT - (有利子負債 + 株主資本) * WACC
= NOPAT - 投下資本 * WACC
= NOPAT - 資本コスト

EVA を高めるには、 WACC を上回る投下資本利益率をもたらす事業のみ投資していくことが大切。これにより、企業価値を高めることができる。

次回予告

WACCを求めるには、株主資本 と 負債 の割合が重要。この両者の資金調達方法で、企業価値にどんな影響が出てくるのか。

次回、企業の最適資本構成と配当政策 編。