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海外からの競合の参入はピンチなのか

ども、@kimihom です。

Web サービスを運営していると、例えば海外で似たサービスが日本語対応して参入して来たりすることがある。とりわけインターネットの世界はこれが顕著で、ユーザーにとってより便利なサービスであれば、海外産でも国産でもそこまで変わらない気持ちで利用することができる。実際、私たちが使っているサービスのほとんどは海外で生まれて日本に持ち込まれたものである。

さて、そうなると海外から類似サービスがやってきた時には基本的にはピンチになる。ちゃんとアンテナを張っておかないとそのうち競争に負けてしまうことを恐れる。

だが本当にそれは恐るべきことなのか。真っ向勝負で戦っていかないといけないのか。今回はそんなテーマについて考えてみたい。

とりわけビジネスにおいて全員が使うサービスは存在しない

ビジネス、つまり BtoB において全員が使う Web サービスは今も存在しないし、今後も確実に出てこない。シェア No1 とかの順位づけは出てくるかもしれないけど、その会社が BtoB において全市場を独占するっていうことは事実上不可能だ。

なんでかというと、すべてのユーザーがすべて同じニーズであるとは限らないからだ。ある企業にとっては独自にカスタマイズして使いやすくしたいという柔軟性を求める場合もあるだろうし、ある企業にとっては機能は少なくても簡単に目的が達成できればいいと考える場合もある。事業規模、業種、顧客、従業員、経営理念・・あらゆる要因が重なって顧客ごとのニーズは多種多様に渡る。

マスを目指す企業は、柔軟性を突き詰めてあらゆるニーズを満たすサービスにしなければならない。それゆえの複雑さや顧客ごとの専用のカスタマイズの知識などがどうしても必要になってしまう。マスを狙う場合はそう割り切ってやっていくしかない。導入のしやすさや使いやすさはある程度犠牲にするしかない。

その複雑さを嫌がってシンプルな最小限の機能のサービスを求める顧客も当然いる。だからこそ複雑だけどたくさんの人の要望を満たせるサービスも残り続けるし、シンプルさを突き詰めたサービスはサービスで残り続ける。

これは機能の数っていう視点での比較だけども、それ以外にも一つ一つの機能が洗練されている、使いやすいデザイン、サポート(日本語)、料金、料金体系、中の人との繋がり・・・など色々な観点が存在する。そんなあらゆる視点の中で、顧客によっては例えば料金は優先度が高いけど、機能の豊富さは優先度が低いといったような観点が生まれるのである。

そんな状況で必要なのは、明確なターゲット決めである。以下の図を見て欲しい。

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ターゲットが明確でないと、ぼんやりとしたターゲットが海外からの強豪の参入によって一気に危機的なものに感じてしまう。この図で言えば海外からの競合がやって来た時に、3分の1の見込み顧客が他で取られてしまう!と感じてしまう。自社サービスを使って欲しいターゲットが広い or 曖昧なせいで余計な心配が生まれて競合を真似て無駄な機能を実装してしまう。本質のターゲットを見失って磨くべきものを間違えてしまう。

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ターゲットが明確であれば、完全に棲み分けられる。特に BtoB であればこのターゲット決めってのは本当に大切だ。上記の赤丸が全てを覆い尽くすことなど不可能なのだ。海外から来た人気サービスであっても、多くのマスを取ることはできても全ての顧客を満足させるサービスを作ることなどできない。

BtoC, CtoC との違い

さて、ここまで BtoB においてはといったのは理由がある。 BtoC の場合は “ネットワーク効果” ってのが大事になってくるからである。つまり、友達が使っているかどうかってのがサービスを使う決め手となってしまうのである。SNS はその典型だ。だからこそ成功するトッププレイヤーのみが BtoC で生き残り続けることができる。

BtoB ではそのネットワーク効果があるにはあるけど、薄いために棲み分けが可能だ。巨大 SaaS 企業でも、小規模向けでシンプルな類似 SaaS を使っている顧客を取ることはできない。それによって、例えば投資を受けてどんどんでかくなって機能が増えてきた SaaS は、そのあとに出てくる小さな規模向けのシンプルな SaaS を使っている顧客を獲得することは難しくなる。だからこそ新しい他の SaaS が出てくるのである。これは一つのいい循環なのかもしれない。

だから、「あの会社が既にこの分野でNo1 で存在するからサービスを作るのをやめよ」ってのは時期尚早な考え方だ。その会社の作っている顧客の中で、他でいいのが存在しないから仕方なく使っているケースってのは多くある。そんな痛みを抱えている顧客の要望を叶えるサービスを作れば、確実にその顧客を幸せにできるサービスを作ることができる。

それは特定の機能を磨いたサービスなのかもしれないし、機能を付加したサービスなのかもしれないし、より美しい何かなのかもしれない。

90% の人に好かれるサービスか、30% の人に愛されるサービスか

これは会社の理念的な話になってくるんだけど、あなたは好かれるサービスを作りたいのか、愛されるサービスを作りたいのか。果たしてどっちだろう?

ここまで書けば、BtoB においては事業規模や事業内容、人の考え方などあらゆるものが多種多様な中、90% をの人に愛されるサービスを作ることは不可能だと感じていただけたことだろう。

90% の人に好かれるサービス を作りたいなら、確かに海外からの競合の参入はピンチになる。それだけマスを取ることが難しくなってしまうのだから。だからこそ、その会社とやりあうくらいな覚悟でやらないと負けるって考え方が生まれる。この競争で最終的に勝つのは1社だ。ターゲットが同じだからである。でも、そんなピリピリモードで頑張って楽しいのだろうか。肝心の顧客は幸せになれるのだろうか。これは前回も話したようなファーストフードで日本1を目指しているようなものだ。

30% の人に愛されるサービス ってのは使われる人は少ないかもしれないが、その少ない人のことを徹底的に考えて磨き上げたサービスであれば、愛されるサービスを続けることができる。老舗の旅館のような存在である。業界を冷静に分析し、正しく住み分けをすることで、顧客もハッピー、事業者もハッピーな感じな構成を目指すことができる。

これは決して理想の話ではない。改めて言うが、BtoB では No1 の CRM サービスであってもシェアは20% に満たない程度なのである。それだけ全市場を独占っていうのは不可能なのである。アメリカを中心に足りない考え方が、愛されるまで顧客のために行動する経営だと考えている。もしその考え方が存在すれば、老舗と呼ばれる企業が多く存在するはずだからだ。彼らは 90% の顧客好かれる(使われる)サービスこそ正義!と考えてしまいがちで、日本でもそうやって流される方々が後を絶たない。

海外からの競合の参入はピンチなのか?

さて今回の結論。

マスを狙っている、もしくはターゲットが明確でないサービスの場合は、ピンチになる。

ターゲットが明確で、その顧客のためのサービスを作っているのなら、ピンチにはならない。

私はそう考えている。