ボクココ

個人開発に関するテックブログ

オムニチャネルコンタクトセンター Twilio Flex の調査報告

ども、@kimihom です。

f:id:cevid_cpp:20190825134809p:plain

夏休みの研究で、Twilio Flex について実際に使って調べてみた。今回はその研究した結果について共有しよう。

オムニチャネルと Twilio Flex

Twilio Flex とは、今 Twilio が一番力を入れていると思われる、オムニチャネルコンタクトセンターのプラットフォームである。

今作、あらゆるチャネルで企業と顧客はやり取りをしている。大事なのは、運営側が好きなチャネルだけで顧客とやり取りするのではなく、顧客側がそのタイミングで一番使いたいチャネルで問い合わせをしてもらう体制の構築だ。

電話、メール、チャット、SMS、LINE、Facebook Messenger、RCS。これらのチャネルをサポートすることで、顧客はお好みのチャネルでコミュニケーションできるようになる。その反面、コンタクトセンター運営側はそれぞれにログインして対応する必要が出てきてしまう。

現状、オムニチャネルコンタクトセンターのソリューションとして価値を提供しているのは Zendesk だろう。 Zendesk を導入すれば、あらゆるチャネルを、全て Zendesk の中で統合することができる。ただ、Zendesk は顧客対応に主眼が置かれていて、顧客管理(CRM) の部分がやや弱いように思う。てことで結局は CRM の部分は Salesforce などを使うといった流れが現状であろう。

そんな中で登場したのが Twilio Flex だ。Twilio Flex は 顧客管理(CRM) 以外の部分の顧客とのやり取りを全て統一させてオムニチャネルのコンタクトセンターを実現するソリューションだ。ここまで書くと Zendesk と全く同じなんだけど、Twilio Flex は完全にカスタマイズが可能であるのが大きな特徴だ。このカスタマイズには、がっつりとプログラミングが入ってくる。そのため基本的には SIer な方々が Twilio Flex をベースに拡張していくようなエンタープライズ向けのソリューションになっている。

なお、既に Twilio Flex の CRM の部分は Salesforce, Zendesk それぞれの Twilio Flex 埋め込みが提供されている。Zendesk に Twilio Flex を埋め込むってのは目的が一緒なものを入れるようで利便性を感じないけど、Salesforce の埋め込みはエンタープライズ向けってのもあって利用する価値があるだろう。

実際に Twilio Flex を使っての報告

Twilio Flex を使うと TaskRouter の力を手に入れられるのだが、この TaskRouter こそエンタープライズ向けとして Twilio Flex の価値を発揮する部分だろう。TaskRouter を使うことで、以下のようなコンタクトセンターを構築できる。

  • 問い合わせをしてきた方が VIP だったので担当者に優先的につなげる
  • 前回の問い合わせを担当した A さんがオンラインなので、優先的に通知を送る
  • チャットで返信を待ちながら、他の電話対応を同じ画面内でする
  • 営業への問い合わせで営業担当が誰もログインしていない場合に、他にログインしているPCに着信を通知する
  • 地域や国、言語によって担当者を変える

これらが「できる」ってだけで、実際には「この条件の時にこのエージェントに通知する」ってのを一つ一つ細かく定義していく必要があるのだ。ご想像の通り、これがまぁ複雑で専門の担当者がやらないと難しい。私もちょろっと設定してみたが、上記の条件を全て満たすような TaskRouter の設定は複雑だしテストも大変そうだと感じた。

さて、これは単に TaskRouter の感想なので Twilio Flex に戻ろう。実際に Twilio Flex を拡張しようとすると、以下のケースで対応が変わってくる。

  • 言語の変更、翻訳
  • デザインの変更
  • チャネルの追加
  • コンポーネント(UI、機能)の追加
  • 動作のカスタマイズ

コンポーネントを追加したり、Flex の動作をカスタマイズする場合には Twilio Flex の提供している React コンポーネントを理解した上で実装していくことが求められる。

チャネルの追加に関して、050/0800/0120, 03 番号, LINE Call, SMS +1(US)番号での送受信, Web チャット, LINE Chat 送受信 の実現見込みは持つことができた。ただ執筆時点では チャット系の返信で、Twilio Flex 内で日本語がうまく打てない 深刻な問題が起きている。まだ日本語のサポートは Twilio 側からすると優先度は高くないのだろうから、修正まで時間がかかりそうだ。

なお、ビデオとメール(大事なのに!) は 未検証となっている。メールはまだ Twilio Flex に正式に取り込まれておらず、実現するには現時点ではコンポーネントの追加を独自で行う必要がある。ただこれは Twilio 側も(きっと)優先度あげて対応していることだろうから待てばそのうち出てくるだろう。Twilio には Sendgrid があることだし。

Twilio Flex で感じた将来的な部分

現時点では、チャットの問題だとか事例がほとんどないことから実際に使うってまでいくのは難しいことだろう。ただ、Twilio Flex で将来的な部分はなかなか興味深いところがある。

Twilio は別のプロダクトで Twilio Autopilot ってのをリリースしている。これはまさに自然言語処理と機械学習によって会話を自動で行うためのソリューションだ。これで Bot や スマートIVR、ホームアシスタントアプリを Twilio の中でまとめて構築することができるようになる。

この Twilio Autopilot と Twilio Flex の統合こそ、Twilio の未来だろう。顧客とあらゆるチャネルで繋がり、その顧客の話を Autopilot から自動で対応したり、オペレーターの手助けをしてくれることになる。サポート担当者の人材不足が騒がれるこの世の中で待たれる未来なのだろう。

ちなみにこの話はまだアメリカですらまともに事例がないので、日本で Twilio Flex と Autopilot で実現するコンタクトセンターが身近になってくるのは5年以上先になるだろう。その頃には他のソリューションが出てきてるかもしれないので、新しい情報を常にキャッチして取り込んでいく姿勢が必要だ。

終わりに

今回は Twilio Flex を調べて実際に使った感想と、将来的な部分について記した。

実際に Twilio Flex でコンタクトセンターをがっつり構築されるようなかたが国内に出てこない限り、Twilio は日本市場を低くみてしまうだろう。もし完全カスタマイズなオムニチャネルコンタクトセンターを本気で実現されたい企業がいれば、ぜひチャレンジしていただきたい。