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個人開発に関するテックブログ

イノベーションの作法を読んで

ども、@kimihom です。

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オススメ本のアドベントカレンダー11日目の記事。本記事はオススメ本というよりかは最近読んだ本という感じではあるけども、せっかくなので記しておく。

オススメ本 Advent Calendar 2019 - Adventar

事前情報

SHIFT:イノベーションの作法

SHIFT:イノベーションの作法

  • 作者:濱口 秀司
  • 出版社/メーカー: ダイヤモンド社
  • 発売日: 2019/06/27
  • メディア: Kindle版

こちらの本、多くの著名な方からのレビューが既にネット上で公開されている。いい値段するけども、読んでみた。

世界的なイノベーター 初の著作! 濱口 秀司 『SHIFT:イノベーションの作法』│ダイヤモンド・オンライン

感想

本書は、とりわけ大企業に所属している方が、自社の技術を応用して全く新しい新サービスを展開しようとするような時に、特に有用な内容であった。大企業で新サービスを開発するってなると、どうしても上司・役員を説得させるというフェーズが必要になり、その説得フェーズで大抵のアイディアはボツとなってしまう。でも、イノベーションを起こすアイディアが、「最初から誰もがいいね」って思うようなものではない。ボツになるアイディアこそ、ダイヤの原石なのである。その点こそ、大企業がイノベーションを起こすことができない最大の理由の一つとなっている。

私も以前は大企業の新サービス開発事業に所属していたから、その事情はよくわかる。誰かが新しいアイディアを出したとしても、その開発の承認を得るには多大な説得フローが待っており、その中で "~~したほうがいいんじゃない?" みたいなアドバイスを聞かなければならないわけである。また、担当者がたくさんいればいるほどアイディアが出てきてしまって全部を取り込んでしまおうとする。そんで色々とファットなアイディアに包まれた新規事業が出来上がり、誰のためのサービスだかわからないものがリリースされてしまうというのはよくある話だ。

イノベーションには、「ビジネスモデル」、「テクノロジー」、「コンシューマーエクスペリエンス」の3つ全てが完璧に揃っている必要があるとのことだ。エンジニアだとテクノロジーばかり見てしまうが、例えば DELL はコンピューターをオーダーメイドで作り上げるというコンシューマーエクスペリエンスを兼ね揃えることで大成功した。また購入した時点から作成を始めるため、在庫の課題を大きくクリアした。私のようなエンジニアだと、常にテクノロジーだけでイノベーションを起こそうと躍起になりがち(パソコン開発で言えば、圧倒的な画質とかスピードとか容量などを考えがち)だが、それだけの視点ではいつまでもイノベーションを起こすことはできない。今までにないビジネスフローや顧客体験を兼ね揃えた事業を始めなければ、イノベーションと言われるレベルの大成功まではいかないのである。

そんな中、本書では日本でも(こそ)、次なるイノベーションを起こせる可能性があると書かれている。日本人の風習や思想などが発明に適しているというのである。

私が共感したのは、人が何かを学ぶ上での2種類のタイプである。

  • 教育プログラム
  • 弟子入り

「教育プログラム」は、まさに学校と同じだ。カリキュラムがあって、そのカリキュラム通りに勉強してテストを受け学べたかどうかを確認していくプロセスだ。誰もがやればできるっていう汎用性と、先生や教科書が設定したレベルに向けてさっと到達できるというメリットがある。私がこの方法の学習方法が嫌いなのは、いつまで経っても先生・教科書の内容を超えることはできないという点である。同じレベルにはなれても超えることはできない。自分から新しい発見や発明をするなんてことは2度と起きない。単に既知の事実を聞いて学んで知っていく。それだけ。そして怖いのは「この方法に慣れてしまうと、弟子入りの効率の悪さに拒絶反応を示すようになる」のである。

「弟子入り」は、日本の伝統を受け継ぐために弟子入りする。まさに日本らしい部分なんだけど、最近はすっかりその効率の悪さばかりに目がいって軽視されてしまう。でも、この方法の何が一番すごいのかというと、いつかは師匠を超えることができる可能性が非常に高いという点である。もちろん、それにはカリキュラムで学んでいくよりも膨大な時間を要する。時間をかけてじっくりと自分で自分を極めていくことで、誰もが到達できない領域にたどり着くことができるのである。イノベーション、つまり誰もが思いつかなかったようなアイディアは、そんな人からしか生まれないはずだ。

かつての日本が本当に凄かったのは、まさに職人レベルの人たちがうじゃうじゃいたからだと思う。その人しか知らない・持っていない何かを極める人たち。彼らが尊敬される価値観がかつての日本にはあったように思う。今は欧米化がどんどん進んで、とっとと金つぎ込んで儲ける手法みたいなのだけが注目されてしまっている。私はかつての職人の考え方へ戻らない限り、いつまでも日本はイノベーションを起こせず低下し続けるままだと思うのである。

終わりに

少なくとも私はかつての日本の素晴らしさ、何かを極める勇気のある職人であり続けたい。その先に、未だかつて誰も経験したことのないような発見や開発ができると信じている。

その実現には長い道のりと覚悟が必要だ。ささっとできるような短時間の成果なんて求めない。

誰かに教えてもらうのではなく、自分で自分を極めていく姿勢を持つ人が増えて、日本から本当のイノベーションが起こって欲しいと思う。イノベーションを起こせる候補の一人として、引き続き地道な成長を続けていく次第だ。