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今からでも欲しい SaaS 領域3選

ども、@kimihom です。

今回は割と思い切ったテーマで記事を書いてみる。日本のスタートアップ/ブートストラップ界隈でどんどん SaaS が出てきて欲しいと思う。今回はそのタネとなりそうなアイディアをご紹介する。

大前提

まず、従来の BtoB 向けのサービスってのはだいたい以下のような特徴がある。

  • ごちゃごちゃして使いづらい
  • 機能多すぎ
  • API がない or 圧倒的に不親切
  • 連携できるサービスが少ない

そこで、プログラミング能力がある方は、以下の3つの領域にチャレンジしてみてはいかがだろうか。

当然ながら、これでそのまま読者の方が始めてみて、「この通りにやったけどうまくいかなかったじゃねーか」という時の責任は負えないのでご注意いただきたい。それは作った人の能力や運によっても大きく左右されるものである。

1. シンプルで柔軟な顧客管理 SaaS

俗にいう CRM と呼ばれるこの分野は、SaaS の中でも圧倒的にニーズのある分野だと思う。ビジネスをやれば、誰だって"顧客" を抱えるはずで、その顧客をしっかりと管理して部署間の情報共有や次なる顧客毎のアプローチ、マーケティングに力を注ぐことができる。

事実、CRM の部類は既にレッドオーシャンだと考える方も多いかもしれない。それだけ競合が多くいることをあらかじめ認識しておいて欲しい。それでも私が1番最初にこの分野を挙げるのには理由がある。

  • シンプルな CRM SaaS はあるけど、柔軟性がなかったり、専門性を要する場合が多い
  • 国内で CRM を今後必要とする顧客がまだまだいるはず
  • API が複雑、連携が困難

個人的にこの業界はちょいちょいチェックしているのだけども、イメージに一番近いのは、Hubspot だ。このサービスはとても良いサービスだと思っているけど、US 発なだけあって当然のことながら日本向けに最適化されたサービスではない。より良い CRM SaaS を目指す上で、以下のような機能を検討すると良いと思う。

  • 項目のカスタマイズ (リードや取引先等のデフォルト項目はあるが、属性は自由に消せるし追加できる)
  • シンプルな検索
  • データに基づく統計分析
  • API による拡張
  • 多くの SaaS サービスとの連携

顧客にメールを送りたいんだったらメールサービスと連携すれば良いし、購買履歴を知りたければ課金サービスと連携すれば良い。このように連携のしやすさを重視した CRM サービスってのは他の SaaS サービス提供者的にはぜひ出てきて欲しいと思っている分野だったりする。

顧客管理の市場を調べてみて、需要の大きい分野 (例えば EC) に特化した CRM も興味深い。

Hubspot に日本の法律や業界を絡めて日本に最適化された、API フレンドリーな CRM SaaS が1つ目の提案。

2. よりシンプルなサポートツール

2つ目にあげたいのがカスタマーサポートツール。顧客とのメール対応をいちいち何かのグループメールで管理するのではなく、チケットや担当者を適切に分けて効果的にサポートを提供するツールは今後も需要がある。

そして今後はメールサポートに留まらなくなるのが確実視されているのがこの分野の面白いところ。今の人たちはメールアドレスを持ってすらいないケースがある。では何でコミュニケーションをとっているのかといえば、 SNS や メッセージングアプリだ。これらの分野に向けたサポートツールを提供すれば、その時代にあったサポートツールとして世間に受け入れられることだろう。

究極を言えば、メール/電話/チャット/SNS/ヘルプセンター といった全てを統合したカスタマーサポートを目指す的な流れもあるにはあるけど、そこはもう Zendesk などがかなり持ってるので、何かに特化した方が逆に面白いと思う。

私のオススメは LINE や Facebook, Twitter, Snow といった流行りのメッセージングアプリのサポートチャネルに特化したサービス。特に大量の若年層の顧客を持つ BtoC ビジネスに受け入れられることだろう。これまた LINE とかを入れようとすると、途端に US のスタートアップは手をつけられない分野だから、LINE との連携は必須になるだろう。

  • 各種 SNS との密な連携
  • 同一顧客で別SNSアカウントを一緒に管理できる簡易CRM
  • 今までのメッセージ履歴を一元管理できる UI
  • 指定した顧客のグループに一括送信できるマーケティングメッセージ
  • API による外部サービスとの連携

3. より柔軟な顧客トラッキングサービス

Web サイトやアプリ上で顧客がどんな行動をしたのかを管理するサービスは CRM 市場についで熱い分野だ。 Google Analytics を筆頭に、ビジネス向けだったりアプリ向けだったりが色々と登場してきている。

それでもまだ今から作っても上手くいくと思う理由としては、以下のような背景がある。

  • ビッグデータ/ ディープラーニング といった分野はまだまだ新しい領域で、専門知識を有する人が圧倒的に少ない
  • 個別の顧客の属性や、個別でどのように行動したのかを管理できるものが少ない
  • 顧客の行動に応じた何かしらのアクションを定義したりしたい
  • A/B テストの実施

今後、顧客の分析でビッグデータから得られる洞察を元に、プロダクト改善が行われることになる。一部の顧客が “ここが使いづらい” という意見だけを鵜呑みにするのではなく、ビッグデータから “顧客の 80% はここの操作でつまずいている” というデータを元にプロダクトを改善するのが当たり前になる時代がやってくるだろう(実際やってきている)。

その時代を先駆けて、最先端技術を駆使したトラッキングサービスが出てくれば、日本どころか世界を相手にしたサービスってのが日本からも生まれるのではないか。

この分野で日本向けにフォーカスするってのは難しいけど、何かアイディアがあればそれを埋め込むのもいいかもしれない。

終わりに

以上、今からでも欲しい SaaS 領域をご紹介した。個人的に、上記のような条件を満たしたサービスが出れば興味が湧くし、試しに使ってみたい。

いうまでもないと思うけど、長期的にビジネスに挑戦するなら、"なぜあなたがそのビジネスをやるのか"という思想が必要だ。ただ単に成功しそうだからという理由だけでビジネスを始めてしまうと、1年ちょっとやってみてダメだったらやめるみたいな中途半端な終わりを迎えることしかない。

今回紹介した3領域はあくまで仮説に過ぎないけど、このような視点で何か自分の実現したいサービスがないか、考えてみるのも面白いと思う。

追記: US のサービスとの差別化に関して

上記3つのアイディアで、日本向けに最適化した機能を埋め込むことを割と強調している。 これはアメリカがこの分野において何年も先にいるというのが理由だ。私たちが今話題になり始めたようなサービスは、すでにアメリカでは当然のように使われているくらい普及しているものであるパターンがほとんどだ。日本は3年は遅れているという印象を持っている。

SaaS で “世界中” で大ヒットさせたいようなものを作るんだったら、アメリカに行く以外方法はないと思う。なぜなら、アメリカではその先端サービスを使って顧客から生まれた次のニーズをさらにサービスとして作り出すエコシステムが既にできあがっているからだ。次にやってくるようなニーズがそもそも存在しない状態の日本で、その先のソリューションなんて当然作れないだろう? 例えば Amazon Echo がそもそも日本国内で普及していない状態で、どうやってあの素晴らしい音声デバイスをベースにしたサービスを作ることができようか。 SaaS で日本発世界がほとんど生まれないのは、このような一般顧客の先端技術の未浸透が大きな原因の一つだと思う。開発する私たち以外にも、使う顧客自身が最先端を行っていないと、世界に先駆けたサービスを作って成功させることは困難だ。これは日本の IE や iPhone の普及率の高さ、シェアリング文化の未定着、現金主義などが重なって進歩をより遅くさせている。

今回出したアイディアは、今から日本国内で作り始めても海外サービスとの差別化で顧客を得ることのできるであろう領域に限定している。これが例えば投資家にとっては夢がないと言われればその通りだと思う。 しかしそれが現実だ。現在日本で成功している サービスのほとんどは、アメリカにも似たようなものが既にあってそれを参考にしたりしている。テクノロジーもそれに伴ってアメリカで生まれたのを使うってパターンがほとんどになっている。

SaaS そのものが日本で盛り上がっていかない限り、その先もないだろう。色々なサービスが起業家から出てきてくることが最初の一歩だと考えている。