ボクココ

サービス開発を成功させるまでの歩み

SaaS にカスタマイズは悪なのか?

ども、@kimihom です。

SaaS(Software as a Service) 界隈でよく言われるカスタマイズの是非について。

顧客ごとに最適なアプリケーションを用意(カスタマイズ)してしまうと、そのための改修や運用コストなどで今後のサービス改善に支障をきたすなどの理由でカスタマイズは悪とされている。本記事ではこのカスタマイズに関する持論を記そうと思う。

カスタマイズのジレンマ

「カスタマイズは一切しないで小規模向けのみでサービスをずっと運用し続ける」って意見なら、カスタマイズは一切しないという方針で良いと思う。しかし、ほとんどの SaaS スタートアップの場合、実際に資金調達を受けて顧客を大規模事業向けにまで増やしていかなければならない。顧客の組織が大きくなればなるほど、このカスタマイズが必要なケースはどんどん増えていく。そこでカスタマイズを一切受けなかったスタートアップは、大規模事業の顧客の要望を叶えるべきか否かの岐路に立たされる。

カスタマイズをしなければ、大企業などの顧客にドンピシャに刺さるサービスを作ることはできない。しかし、カスタマイズをしてしまうと、そのための顧客のために時間を取られる。この両者のトレードオフに SaaS は常に立たされている。

じゃあ どうにかして対応することができないか。ここは先人の知恵を借りることが大事であろう。

開発者をも味方につけたセールスフォース

SaaS の王者といえば セールスフォースだろう。そのサービスを使ったことがなくても名前くらいは知っている方も多いはずだ。基本的には他でもよくある "CRM" のサービスを提供する同社が、なぜここまで大成功と言えるレベルにまで達したか。

それは先ほど挙げた、カスタマイズのジレンマを見事にクリアしているからだと考える。

セールスフォースは、カスタマイズを一切受けない代わりに第三者の開発者が自由に開発/拡張できる SaaS プラットフォームを提供したのである。開発者はセールスフォースの提供する API や独自プログラミング言語 Apex などを利用することで、あらゆる形態のアプリケーションを、開発者が自由に拡張して特定の顧客のための最適なシステムとして構築できる。 これによって、あらゆる業種業態の企業に最適なアプリケーションをセールスフォース内で統合できるようになった。

セールスフォース側では、相変わらずサービスのコアの部分(つまりCRM)に集中することができる。第三者の開発者がどんどん増えていけば、あらゆる顧客にとって最適なアプリケーションがバンバン出てくる。しかも第三者の開発者はセールスフォース"アプリ"として世界中に公開することのできるプラットフォーム(AppExchange) まで用意している。顧客は、欲しいアプリがあればダウンロードして一瞬で自社に最適な形でサービスを利用することができてしまう。開発者側が自社のセールスフォースアプリを利用してもらうためにセールスフォースを使うよう案内してもらうような広告の仕組みも実現できてしまう。

当然、その SaaS プラットフォーム自体に多くの顧客や成功事例がないと、開発者は波に乗ってこようとはしない。ここが難しいところなんだけども、カスタマイズを受けないで顧客にカスタマイズを提供する という技を実現するにはこの方法しかないだろう。

全ての SaaS は連携の基礎となる API の提供を検討すべき

この記事で私が言いたいのはこれ。今の日本の SaaS は API を提供しなさすぎだということ。自社で顧客の要望を全て完結させようなどという考え方はとっくに捨てるべきで、他の特徴のある SaaS と連携をしていくことで、顧客ごとに最適なシステムを選んで構築できるようにしなければならない。これがわからない方は、チャットツールに過ぎない Slack がなぜあんなにも大成功したのかも改めて考え直すべきだろう。

「カスタマイズを一切受けない」でサービスをより成長させたいと思うスタートアップなら真っ先に API を公開すべきだ。そうでなければ、全ての顧客がサービスの提供する基礎機能のみしか利用することができない。これでは大きな組織に最適なアプリケーションはいつまでたっても出来上がらないし、他に最適で柔軟なサービスが出てきたら、他社サービスに移ることだってあり得る話だろう。

SaaS API のエコシステムが成り立ち、顧客はどんなサービスとも連携できて自社に最適なシステムを選んで構築することができる。そんな自由な選択こそが、すぐに最適なシステムを利用できるという SaaS の良さを更に引き出すことだろう。

もし読者が SaaS を選ぶ(利用する)側に立ったときには、そのサービスが、API を積極的に公開しているか というのを注目してみよう。API が公開されていなかったり、クローズドな API しかないようなサービスは、今後のサービスの拡張性を全く考えず、自社で全てをまかなおうとしている、旧来の考え方のサービスであると判断できるだろう。

終わりに

本記事では SaaS をカスタマイズすること自体は悪ではないということと、カスタマイズのためには外部の開発者を巻き込み、自社の API を積極的に利用していただくような仕組みの構築が必要だと説いた。

今後はサービスごとの密な連携こそが、 SaaS の運命を左右しかねない。てことで、開発者の皆さん頑張って API を公開していこう。